
皆さんこんにちは!メカ旦那です。
有線LANで有名なEthernet(イーサネット)。
通信速度が100Mbps以上と高速な規格で、有線LANだけではなく、自動車、工場、データセンターなど様々な所で利用されています。
他の通信にはない技術も使われており奥が深いですが、イラストを用いてわかりやすく解説します!
有線LANの事実上標準規格

ズバリEthernetを一言で表すなら、「有線LANでほぼ標準となっている通信規格」です。
家や会社でインターネット接続する際、
- 端末からルータまでの限られた範囲のネットワークをLAN(ラン、Local Area Network)
- ルータから最終目的地までの広範囲ネットワークをWAN(ワン、Wide Area Network)
と言います。
LANの中でも、
- 端末⇔ルーター間をケーブルで接続する場合は有線LAN
- 端末⇔ルーター間を電波で接続する場合は無線LAN
と言います。

有線LANは主にNIC(ネットワークカード)、スイッチ(スイッチングハブ)、ケーブル、コネクタで構成されています。それぞれに適用される規格について、
- NIC、スイッチがEthernet (イーサネット)
- ケーブルがCat (カテゴリ)
- コネクタが8P8C (RJ45)
がほぼ標準となっています。更にEthernetはPHY、MAC、MIIで構成されます。
| OSI | 規格 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 第1層 | cat(カテゴリ) | ケーブルの物理仕様 | 通信速度に応じてCat5e, 6, 6A, 7, 8に分類される。 |
| 第1層 | 8P8C(RJ45) | コネクタの物理仕様 | – |
| 第1層 | Ethernet (PHY) | NIC, スイッチの物理仕様(ビットから電気への変換) | 通信速度、媒体に応じて100Base-TX, 1000BASE-Tなど様々存在する。 |
| 第2層 | Ethernet (MAC) | NIC, スイッチの論理仕様(MACアドレスやフレーム構成) | – |
| 第1, 2層の境界 | Ethernet (MII) | PHYとMACのICチップ間の接続仕様 | 様々存在するが、現在はRGMII、RMIIが主流。 |
Cat、8P8CはEthernetと強い関連がありますが、厳密に言うと別規格になので、別記事で解説します。今回はEthernetに特化して解説します。
なおEthernetは、LAN以外に自動車、工場、データセンターなど様々な所で利用されていますが、それらもカバーして解説します。
通信仕様
OSIは第1~2層
通信には多数の規格(ルール)があり、組み合わせる事で1つの送受信が成立しています。電気に関する事、データ伝送に関する事、ユーザーが使うアプリに関する事など、その「機能」に着目して規格を分類する手法をOSI参照モデルと言います。

それぞれの層は完全に独立しているわけではなく、例えば下位層の規格利用を前提に、上位層の仕様が設計されていたりする事も多いです。
Ethernetは、PHYが第1層(物理層)、MACが第2層(データリンク層)です。MIIはピッタリ当てはまる層が無く、第1, 2層の境界というイメージです。
他通信との比較
第1層、2層の通信方式で比較すると、Ethernetは以下の特徴を持ちます。
- デジタル
- シリアル
- クロック同期
- 差動
- 全二重
- 物理トポロジ:スター/ツリー型、論理トポロジ:P2P
- マルチマスター

よくわかりませんね、、、一つずつ解説します!
デジタル

アナログは連続的な値を取りますが、デジタルは0と1の2値を用います。例えば電話やラジオはアナログですが、PC、マイコンだとデジタル通信が主流になります。Ethernetはデジタルです。
シリアル

デジタルは0と1を多数のbitで送受信します。パラレルは複数の信号線でまとめて通信するのに対し、シリアルは1本の信号線を用いて通信します。例としてパラレルはプリンター、シリアルはマウスやキーボードで利用されています。
一見、パラレル通信の方が一度に多くのデータを送信でき効率的に思えますが、配線が長くなると、各信号の時間ズレが発生し、上手く送受信できないことがあります。シリアルはその時間ズレが無い上に配線数が少なく済むため、最近の高速通信ではシリアルが主流になっています。Ethernetもシリアル通信です。
クロック同期

デバイス間で送受信する際、いつ送るのか、いつ受け取るのか、といったタイミング(クロック)を両者で認識する必要があります。クロックが共有されている状態はクロック同期と呼ばれています。対して共有はされていませんが、各々独自のクロックを持って通信することを非同期(調歩同期)と言います。イメージは、クロック同期が同じ壁掛け時計を見ながら通信、非同期はそれぞれの腕時計を見ながら通信、ですかね。
同期通信はクロックが共有されているため、送受信にズレが生じないです。一方、非同期はクロック専用の信号線が不要なため配線数を少なくできるのが特長です。Ethernetはクロック同期になります。クロック用信号線はありませんが、送信側でデータ信号にクロックを埋め込み、受信側で復元しています。
差動

デジタル通信なので、何を0とするのか、1とするのかの基準があります。信号電圧がある基準電圧より低い状態を0、高い状態を1とする方式をシングルエンド(不平衡) と言います。対して、信号が2つあり、電圧の差分から0,1を判別する方式を差動(平衡、ディファレンシャル)と言います。
シングルエンドは信号線が1本で済むメリットがありますが、ノイズが入った時に0を1(もしくはその逆)と誤認識してしまう恐れがあります。対して差動信号は信号線は2本いるものの、電圧差を見ている関係上、ノイズによる影響が少ないメリットがあります。Ethernetは差動になります。
全二重

データを送受信する際、2系統の伝送路で別々に行う方式を全二重通信(フルデュプレックス)と呼びます。対して、1系統で行う方式を半二重通信(ハーフデュプレックス)と言います。全二重は送受信を同時に行うことができるのに対し、半二重は同時に行えません。ただし信号線が少なく済むのがメリットです。
Ethernetは全二重です。ただし1本の線で同時に送受信を行っています。仕組みについては後述します。
ネットワークトポロジ

デバイスの接続形態をネットワークトポロジと言います。
一言に接続形態と言っても、着目点によって2種類存在します。
- 物理トポロジ:配線の繋ぎ方
- 論理トポロジ:データの流れ方
それぞれのトポロジで、ポイントツーポイント(P2P)、バス型、デイジーチェーン型、スター型、ツリー型、リング型など様々存在します。また通信規格によって、トポロジの形態が異なる場合もあります。
Ethernetは、
- 物理トポロジ:スター型/ツリー型(リンク単位はP2P)
- 論理トポロジ:P2P
になります。
マルチマスター

シリアル通信は半二重のように1本の伝送路を複数の機器で共有することがあり、「どこがいつ何のデータを送るのか」を決めないとデータ衝突(同時送信)が発生します。このルールは主従関係と呼ばれており、優先権を持つデバイス(主)をマスター、それに応じるデバイス(従)をスレーブと呼びます。具体的には、
- マスターが通信の開始・クロック・アドレス指定を実施
- スレーブは命令を受けて応答
になります。
一方、主従関係が無くどのデバイスもマスターになれる関係はマルチマスターと言います。
Ethernetはマルチマスターに該当します。
PHY
規格名
PHYはPhysical Layerの略称で、Ethernetの第1層(物理仕様)を規定しています。物理仕様と言っても、通信速度など様々あるため1000BASE-Tのように名前が付いています。名前は最大通信速度,搬送波の有無-ケーブル媒体で表記します。

ケーブル媒体
ケーブル媒体は銅線(ツイストペア)、光ファイバの2種類があります。光ファイバの方が伝送距離が長い、ノイズの影響が無いなどメリットがありますが、高価なため民生用は銅線が一般的です。LANケーブルは銅線になります。
| 媒体 | 記号 | 最大伝送 距離 | 帯域 | ノイズ影響 | 消費電力 | 重量 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 銅線 | T1, TX, T | 100 m | 40Gが限界 | あり | 高速だと大 | 重い |
| 光ファイバ | FX, SX, SR, LX | 数十 km | 広い | なし | 高速でも小 | 軽い |
銅線
銅線はツイストペアという2本の線をねじって1ペアとする事でノイズの放射を防いだり、逆に侵入を防いだりしています。使用するペア数は1~4と規格によって異なります。有名な規格はこちらです。
| 規格名 | 最大通信速度 [bps] | 使用するペア数 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 100BASE-T1 | 100M | 1ペア (同時送受信) | 車載 |
| 100BASE-TX | 100M | 2ペア (TX+/TX-, RX+/RX-) | FA(工場自動化) |
| 1000BASE-T | 1G | 4ペア (同時送受信) | 民生用PC、サーバー |

光ファイバ
光ファイバは2本1組でケーブル内に複数あり、送信用、受信用と分ける事で全二重通信を実現しています。ファイバ内にはコアと言う穴がありますが、
- コア径が細く、光の経路が1本で、長距離通信に向くものをシングルモード(OS)
- コア径が太く、光の経路が複数で、短距離通信に向くものをマルチモード(OM)
と言います。
主に産業やインフラ用途になりますが、規格も存在します。
| 規格名 | 波長 [nm] | 最大通信速度 [bps] | コア | 最大通信距離 | 用途 |
|---|---|---|---|---|---|
| 100BASE-FX | 1310 | 100M | マルチモード | 2 km | 施設間通信 |
| 1000BASE-SX | 850 | 1G | マルチモード | 550 m | 構内用LAN、データセンター |
| 1000BASE-LX | 1310 | 1G | シングルモード | 10 km | 施設間通信 |

パルス変調・符号化

今まで色んな通信を学んできたけど、Ethernetは100Mとか1Gとか速くないですか?

そうなんです!Ethernetは最低でも100Mbpsなので、シリアル通信の中では高速で、更に長距離通信や同時送受信も可能なんです!これらを支えている技術「パルス変調・符号化」「エコーキャンセル」について解説します。
まずはパルス変調・符号化についてです。
100Mや1Gなど高速になると、そのままケーブルに流した際にノイズを外部へ放射したり、減衰して届かなかったり、同期が難しかったりと、様々な課題が出てきます。これを解決するために、パルス変調・符号化で、1ペア当たりの速度を下げたり、あえてビット数を増やして同期性を高めたりしています。規格によって変換方式は異なります。


ちなみに、0と1を2つの電圧レベルに割り当てる最も一般的なパルス変調はPAM2と言います。光ファイバ規格(1000BASE-SX/LX)や、多くのシリアル通信(I2C, SPI, UARTなど)で利用されています。
エコーキャンセル
続いてエコーキャンセルです。
例えば100BASE-T1、1000BASE-Tのように、1ペアで同時送受信ができる規格があります。ただ、電線内で送信と受信のパルスが混在してしまうので、PHYチップで、
- 自分が送信した波形を把握
- 受信時にそれを差し引いて、相手の信号だけを復元
しています。
この仕組みをエコーキャンセルと言い、これにより全二重通信を可能にし、1000M以上という高速通信を実現しています。

ちなみに、車載用の100BASE-T1は軽量化の為にツイストペアが1ペアしかありませんが、エコーキャンセルを使う事で、同時送受信を可能にし高速通信しています。

ちなみに初期のEthernetは半二重通信だったため、データ衝突を防ぐために「CSMA/CD」という方式を使っていました。現在は全二重通信が主流の為、エコーキャンセルが使われています。
オートネゴシエーション
UARTなど一般的なシリアル通信は、ノード同士で通信速度設定を合わせる必要があります。
しかしEthernetは、通信経路(リンク)が確立されたタイミングで、PHY規格(速度、半二重/全二重)を自動で設定してくれます。これはオートネゴシエーションと言います。
例えばノードA⇔B間の通信を考えます。仕組みはこちらです。
- 物理的に通信経路が確立されると、AからFLPバーストと言うビット列を連続送信
- Bが3回連続で受け取ると、受領した証としてACKビットを1にしてFLPバーストを送信
- FLPバースト内にはAの対応可能規格情報があり、B側で対応可能かつ最も優先順位が高い規格(より高速、より効率的(全二重)な規格)を選択する。
- 同様にBからもFLPバーストを送り、Aで規格を選択
- AとBの規格が整合される。

FLPバーストは基本のベースページと、追加で規格を伝達するネクストページ/拡張ネクストページがあります。

ちなみにオートネゴシエーションは隣り合う2つのノード間で行われます。その為、例えばノードA⇔スイッチングハブ⇔ノードBという経路の場合、A側は100Mbps、B側は1000Mbpsのように速度差が生じる事があります。この場合全体の実効速度は100Mbpsになりますので注意が必要です。
また片方がオートネゴシエーション有効化、もう片方が無効化している場合注意が必要です。この時オート側はFLPバーストを送信しますが、相手から返信が来ません。代わりにアイドル信号は届きます。この時パラレルディテクション機能で速度はわかりますが、全二重/半二重が判別できないため自動的に半二重を選択します。無効化側が全二重を設定していた場合、デュプレックスミスマッチとなり、データ衝突やエラーパケット多発などの通信障害が発生します。
この場合は両方オートネゴシエーション無効化(固定化)にしてください。

MAC
MACはMedia Access Controlの略称で、Ethernetの第2層(論理面)を規定しています。MACで規定されている項目について解説します。
MACアドレス
Ethernetで通信するには、以下の番号が必要です。
| 番号 | 内容 | OSI | 範囲 | 設定 |
|---|---|---|---|---|
| ポート番号 | 最終目的地のソフトウェア番号 | 第4層 | 16 bit | 変更可能 |
| IPアドレス | 最終目的地の機器番号 | 第3層 | IPv4:32 bit IPv6:128 bit | 変更可能 |
| MACアドレス | ネットワーク機器固有の番号(NIC) | 第2層 | 48 bit | 基本的には固定 (製造時に割り当て) |
IPアドレス、ポート番号は上位層の話ですが、MACアドレスは第2層で規定されており、Ethernet用、Wifi用、Bluetooth用と通信規格に応じて個別に存在します。ただ構造はIEEEという管理団体が決めているので共通しています。

フレーム
PHYは様々な規格が存在しますが、フレームは基本的にEthernet II(DIX仕様)が使われます。構造はこちらです。

フロー制御

ノードA⇔スイッチ⇔ノードBのように、スイッチを介したEthernetを考えます。スイッチは受信フレームをバッファメモリに格納した後、必要な宛先に送信します。その後フレームはバッファから消去されます。
A側とB側で通信速度差が大きい場合、受信フレームがバッファ容量を超える事があり、結果フレーム破棄、再送処理による遅延が発生します。バッファが溢れる前に「これ以上送らないで」の警告信号を出すことで、送信を中断します。この仕組みはフロー制御と言います。
警告について、半二重はジャム信号と言い、ランダムな時間待機した後再送します。全二重はPAUSEフレームと言い、指定時間待機した後再送します。
MII
概要

今まで解説したPHYとMACは役割が異なる(OSIの層が異なる)為、別々のICチップや、別々の回路になっています。これらを物理的に接続する規格がMIIです。
MIIも色々種類がありますが、配線の種類は大まかにデータインターフェース、管理インターフェースに分けられます。
RMII、RGMII
MII系で現在主流となっているのがRMII、RGMIIです。それぞれの違いをまとめてみました。

| 項目 | RMII | RGMII |
|---|---|---|
| 特徴 | 10/100Mbps通信で使われる ピン数が少ない規格 | 1000Mbps(ギガビット)通信の標準規格 |
| 最大速度 | 100 Mbps | 1000 Mbps |
| データインターフェース | ■MAC→PHY(3本): 2bitデータ、送信有効 ■PHY→MAC(4本): 2bitデータ、キャリア検出/データ有効、受信エラー ■クロック(1源): 50MHz | ■MAC→PHY(6本): 4bitデータ, 送信制御, 送信クロック ■PHY→MAC(6本): 4bitデータ, 受信制御, 受信クロック ※クロックは最大125MHz |
| データ幅 | 2 bit | 4 bit ※DDR (クロックの立ち上がりと立ち下がりでデータを送る)で実質8bit分を送信 |
| 主な用途 | 家電、安価なマイコン など | 産業用PC、ルーター など |
Ethernetを利用する上位規格
Ethernetは第1~2層の規格になりますが、様々な上位プロトコルが利用しています。代表例について解説します。

まとめ
Ethernetの特徴をまとめるとこちらです。
Ethernetは100Mbps以上と高速な規格で、有線LANだけではなく、自動車、工場、データセンターなど様々な所で利用されています。今回の解説が参考になれば幸いです!
他のシリアル通信についても解説しているのでぜひご覧ください!



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